最愛の妻を手をかけた夫の苦悩 「老老介護」の悲劇(産経新聞)

 「50年以上のつれあいですから、好きでした」−。長年介護をしてきた妻を絞殺したとして、殺人の罪に問われたさいたま市浦和区領家、無職、出川隆一被告(78)。さいたま地裁で開かれている裁判員裁判の法廷で、長年連れ添った妻への思いを語った。それならなぜ、被告は最愛の妻を手にかけてしまったのか。被告の法廷供述からは、高齢者夫婦が「老老介護」を続けることの苦悩がうかがえる。

 起訴状によると、出川被告は昨年6月30日昼、自宅で妻の節子さん=当時(73)=の首にネックウォーマーを巻き、ロープで首を絞めて殺したとされる。

 検察側の冒頭陳述などによると、出川被告は23歳で節子さんと結婚。しかし、長女の死去をきっかけに十数年前から節子さんが鬱(うつ)病(びよう)や認知症になり、出川被告が節子さんの介護を続けてきた。週に3回は施設に通わせ、それ以外は自宅で介護していた。

 弁護人「(以前住んでいた東京から)浦和に来たころは気持ちが楽になりましたか」

 被告「はい。ご飯を作るのも結構楽しかった」

 弁護人「節子さんの好きなものを用意しましたか」

 被告「はい。医者からたくさん食べさせるように言われていたので」

 弁護人「節子さんは1人でトイレに行けましたか」

 被告「私の背中に捕まらせて連れて行きました」

 献身的な介護にもかかわらず、進行する節子さんの病状。出川被告は「気の強い家内だったので、かわいそうというのを通り越して何と惨めなんだろうと思った」(被告人質問での供述)と思い詰め、次第に心中を考えるようになった。

 弁護人「自分だけ死のうと考えたことは」

 被告「最初はそうでしたが、よく考えると家内をおいていけませんでした」

 弁護人「なぜ」

 被告「娘が夫と母親の2人の面倒をみるなんて、かわいそうだったから」

 出川被告は、ついに犯行に及んだときの状況についても語っている。

 弁護人「捜査段階の調書には、首を絞める前に『お母さん、ごめんね。すぐ行くからね』と言ったとありますが、実際に言葉で言ったのですか」

 被告「言葉にならないような声で、言ったと思います…」

 自分も死のうと思って県内をさまよったが、死にきれなかったという出川被告。最終意見陳述で「多くの人に迷惑をかけた」と涙ぐんだ。検察側は懲役5年を求刑。判決は12日に言い渡される。(西尾美穂子)

【関連記事】
「老老介護」殺人初公判 弁護側、同意殺人罪を主張
老老介護疲れ…83歳夫が妻の首絞め殺人未遂容疑
老老介護、誰もが苦しいけれど「前向きに」
介護疲れの果て、親族殺人の半数は「被害者が配偶者」
老老介護 みな同じ悩み…妻を看る夫は死亡リスク倍
20年後、日本はありますか?

山で生活、「空腹で侵入」=食料品窃盗容疑の男逮捕−警視庁(時事通信)
<東京大空襲>朝鮮人被災、忘れないで…包括的証言集を出版(毎日新聞)
<政治とカネ>首相、改革強調 自民「責任取ってない」(毎日新聞)
事故米転売、「三笠フーズ」元顧問に有罪判決(読売新聞)
【十字路】実物大の大仏半身像難波宮跡公園にお目見え(産経新聞)
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。